このページの先頭へ
リンクをコピーしました

2023年3月28日

【開催レポート】3つの「ならでは」で深く味わう、農業と 伝統芸能「春を呼ぶ⿊川⽥植踊り」

気持ちよい晴れ空の下、「盛岡に春を呼ぶ黒川田植踊り」に参加するみなさんが盛岡手づくり村に集まります。
「今日は3つの『ならでは』を通して、美食王国もりおかならではの切り口で農業と芸能をみつめてみたいと思います。昔から続く、農業と芸能の縁の深さを感じられたら。」と、はじめに案内がありました。

ならでは体験 ❶ 9:30~ 盛岡食と農のキホン

「ならでは」1つ目は、手づくり村の2階にある展示室で「盛岡 食と農のキホン」を学びます。

実は正式名称は「地場産業振興センター」だという手づくり村。その名前の通り、展示室の中は盛岡のあれこれがぎっしり。入るとすぐに実物大のチャグチャグ馬コに迎えられ、工芸、食、酒、と盛岡の土地に根付いてきた産業について詳しく知ることができる資料が並んでいました。

「ここは初めて入りました、手づくり村に見学できる施設があったのを知らなかった!」と驚く方も。

昔の酒蔵の提灯が並ぶ中には、今まで聞いたことがない酒蔵の名前もありました。写真や年表を見るとぼんやりしていた自分の知識までちょっと整理され、新しい発見もたくさん!

食のコーナーをじっくりみながら、「見ていたらお腹が空いてきました(笑)ナオライタイム、楽しみです…!」と呟く方や、「こんな素晴らしい展示、多くの人に知ってもらいたいですよね。」という声も。

食だけに限らず、自分の暮らしている盛岡という場所がどんなふうに成り立ってきたのか、ぎゅぎゅっと凝縮して知ることができた時間でした。

ならでは体験 ❷ 10:00~ 食と農と郷土芸能のヒミツ

2つ目の「ならでは」は、この後に披露してもらう黒川田植踊りの演目の見どころやポイントをプロに伝授してもらう贅沢な時間です。

解説をしてくださったのは、盛岡市無形民俗文化財保存連絡協議会顧問の藤澤清美さん。

「田植踊りは全部見ると1日かかってしまうほどのボリュームがあるもので、一年の米作りの流れと農民の知恵が詰まっているんです。」伝統芸能へ向ける熱い気持ちが、一言一言に詰まっているのを感じます。

田植踊りは、旧暦の正月から踊り始め、その年の豊作を願うもの。昔は農家の長男にしか教えない、という時期もありましたが、今は逆に女性の踊り手が多いのだそうです。

お話の中で印象的だったのは、「一八(いっぱち)」のこと。芸達者な方が担当する役で、ひょっとこのお面をかぶり、ひょうきんな動きやアドリブが多い、一八。「農業の厳しさや苦しさを吹き飛ばすような明るさと娯楽性に注目してみてほしいです」と藤澤さん。


今回踊ってくださるのは、黒川地区の中学生高校生や社会人が中心になっている黒川田植踊り保存会のみなさんです。

田植踊りには座敷で演じる「座敷田植え」と庭先で演じる「庭田植え」の二通りがあるのですが、今回は盛岡周辺に伝わる座敷田植えを見せていただきました。

岩手には97の伝統芸能団体があり、国内でもかなり多い方なのだそう。さんさ踊りをはじめ、土地ごとにいろいろあるなぁ、くらいの認識だったので驚きました。

ならでは体験❸ 10:45~ 郷土芸能演目鑑賞

手づくり村から外に出ると、茅葺き屋根と快晴の空に白鳥のV字飛行が見えました。鳴き声を聞きながら南部曲り家へと移動します。こちらの南部曲り家は明治時代の建物で雫石から移築されたのだそう。農耕馬と人が共に暮らす、まさに盛岡「ならでは」の住居ですね!

ひなたはぽかぽかと春のようなあたたかい日差しですが、曲り家の中はひんやりと冷たく、踊りが始まる前のほどよい緊張感と期待が入り混じったような空気が心地よく感じられます。

黒川田植え踊りの演目は以下の6つです。

1.三番叟(さんばそう)

2.春田打ち

3.苗代こすり

4.種まき

5.笠振り

6.仲踊り


場を清める意味があるという、一つ目の演目「三番叟」。両手をシャンシャンと振りながら舞台の四角をゆっくりと回っていきます。


こちらは2つ目の演目「春田打ち」。鍬(くわ)を使って軽快に踊ります。


3つ目は「苗代こすり」。太鼓と笛の音が心地よく響いていました。参加者のみなさんもキレのある動きにみとれているようでしたよ。


こちらが藤澤さんに教えていただいた「一八」。4つ目の演目「種まき」で登場しました!動きもコミカルでかわいらしくて、目が離せません!


5つ目の演目「笠振り」は、名前の通りダイナミックに頭についた花笠を振ります。華やかな衣装とのギャップにびっくりしました。


最後は「仲踊り」。6人の踊り手が2人1組になり、にぎやかで楽しそうな雰囲気。舞台にパッと花が咲いたようでした。


1つの演目が終わるごとに、曲がり家の中に参加者のみなさんの拍手が起きていました。

踊りが終わったあとは、保存会の方々の自己紹介とインタビュータイム。


中学生、高校生からベテランの方までいらっしゃる黒川田植踊り保存会。踊っているときのキリリとした表情とはまた違う清々しい笑顔。地域に積極的に関わり、伝統芸能を受け継いでいる姿、とても素敵でした。


手をあげ、勢いよく舞うように叩く太鼓の演奏をもう一度観せていただけたのも嬉しかったです!笛担当の自己紹介の場面では、笛の名人藤澤さんから厳しくあたたかい指導が入る場面も(笑)

ならでは体験❹ 12:00~ 直会「ナオライタイム」

南部曲がり家から手づくり村の部屋に戻ると甘酒の香りでいっぱいでした!お団子とあつあつの甘酒、いただきます!

手づくり村の中にあるMORIOKA 手づくり村マルシェさんで作った甘酒と、千秋堂さんのお団子。

きっと、田植えや稲刈りなど米作りの中の「おやつ」ってこんな感じだったんだろうなぁと想像しながらの「ナオライタイム」。

「直会(なおらい)」は、昔から郷土芸能やお祭りにはつきもので、行事の後に、神様への供物(米から作られたものとしてお酒が主)を下げて、その場に参列した人達や舞手の人達で一緒に戴くものだそう。地域ならではの一体感や充足感もあり、交流をしながらにぎやかに締めくくられるそうです。

甘酒で、ひんやりとしていた体もあっというまにぽかぽかになりましたよ!

そして、お団子をいただきながら、藤澤さんに質問タイムがはじまりました。


こちらの男性は八戸から来た参加者の方でした。八戸の伝統芸能「えんぶり」と田植踊りの違いが興味深かったそうで熱心にお話を聞いていましたよ。

今回は3つの「ならでは」で大充実のツアーでした!展示室で盛岡の食への理解を深め、藤澤さんからは、岩手の伝統芸能を熟知した方だからこその深さと時間軸のお話を伺うことができました。伝統芸能と食文化のつながりを意識すると新たに見えてくることもありましたね。いままでとこれから、繋いでいきたいことについて考える機会になりました。

そして、なんといっても印象に残っているのは踊り手のみなさんのフレッシュさ!田植え踊りの演目ももちろんですが、そのあとのお一人ずつのインタビューでのお話や笑顔。観ているこちらまで晴れやかな気持ちになりました。

写真・文/LITERS 菅原 茉莉


募集ページはこちら

【参加者アンケートより】

・田植え踊りについてほとんど知らなかったので食の基本である「米」についての企画はとても良いと思ったし、勉強になった。
・岩手の民俗芸能が多い時で1200あったと聞き驚いた。
・歴史やルーツの解説が面白かった。
・今回のような機会がなければ得られない体験ができてとても楽しかった。
・先に解説を聞くことで、踊りを見るときに思い出しながら見ることができた。
・甘酒とお団子ごちそう様。甘酒が苦手な人への盛岡りんごジュースの配慮もありがとう。
・農業の経験があまりない人が説明をききながら参考にできるテキスト・イメージ資料があればもっと良かった。

この記事に関連した記事はこちらから

MENU