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私のてつがく

私のてつがく

盛岡市で活躍する気鋭の農家の方々の思いや考え方を「私のてつがく」として紹介します。

2021年2月24日

VOL 4 桜木農園 藤澤毅広(たけひろ)さん

桜木農園 藤澤毅広(たけひろ)さん

 第4回は情報通信技術(ICT)を活用し、「完熟」にこだわったイチゴを多くの人に食べてほしいと前進を続ける桜木農園の藤澤毅広(たけひろ)さんの「私のてつがく」を紹介します。

 盛岡市上太田でイチゴとミニトマト合計25㌃のハウスを管理しています。現在「紅ほっぺ」「やよいひめ」「よつぼし」の3品種のイチゴを育てています。幼いころから大好きだったイチゴの「おいしさ」を日々追求しています。

◆「農業」で実感した社会貢献

 2012年の秋、今の土地を見つけて農業を始めました。以前は農業とは縁遠い仕事をしていましたが、年齢を重ねるにつれ、何か少しでも社会の役に立つことができたらいいなと思うようになりました。そして、この気持ちを実現したいと転職を考え始めました。

 転職を考えている頃、知人農家から声が掛かり、1日だけ農作業を手伝いました。その時、一生懸命育てた作物が実を結んで、いろんな人の「生きる」ことにつながっている「農業」に素晴らしさを感じました。わずかな時間ながら、自身の価値観がとても大きく変わったのを覚えています。

◆未知の世界、独学で道ひらく

 農業を始めるならば、昔から大好きなイチゴを育てようと決めていました。幼い頃、母と2人で食べるイチゴが大好きだった思い出があります。

 しかし、農業初心者で知識も技術も未熟な私がイチゴを栽培することは難しいと周囲の方からアドバイスがあり、「イチゴを育てる」という夢は一旦胸に秘め、まずはミニトマトから取り組みました。

 ミニトマトを始めて4年。コツコツと独学で増やした知識をもとに、ついにイチゴ栽培に着手しました。また農業についての経験が増えたことから、自分の理想とするイチゴを作るにはICTの活用が不可欠であると考え「スマート農業」に挑戦しました。

◆いいことづくしのICT活用

 冬の気温が低い盛岡は、決してイチゴ栽培に向いているとは言えません。生育環境を整えるためにICTを活用。ハウス内の温度、湿度、二酸化炭素濃度、培地温、日照量などを調整しています。環境制御システムは自分で数値を設定することにより、24時間ハウス内の環境をコントロールしてくれます。季節や天候の変化、イチゴの状態を見ながら設定を変えています。

 環境制御は機械がしてくれますが、設定は自分。生育環境に関する基礎知識は必須ですし、日々イチゴを見て学ぶことを大切にしています。ICT導入により温度管理などの作業が省力化でき、よりイチゴと向き合う時間が確保できるのも利点です。
 最初の設備投資は大きいですが、今はメリットしか思いつかないくらいです。

 ICTの操作は基本的に私が行いますが、ほかの作業は全てスタッフ皆で分担しています。機械がハウス内環境を整え、微生物などが土壌内環境を整えてくれる。そして人が、細部まで衛生的に手入れを行う。どれかひとつが欠けても、品質を維持出来ないと考えています。

◆本当においしいイチゴを届けたい

十分に熟すまでしっかり育て上げることにこだわり、本当に自分がおいしいと思うものを皆さまに食べてほしいと思っています。大好きなイチゴだからこそ、妥協せずに愛情を注いで作りあげたいのです。

 大粒のイチゴには甘さと栄養がたっぷり詰まっています。この大きさがおいしさの証しです。

 イチゴを健全に育てるためにストレスを減らし、おいしさの源でもある光合成を促すようにしています。ここでも活躍するのがICTです。自然環境下では、光合成に必須な二酸化炭素の濃度を大きく上げることが難しいからです。イチゴ本来の育つ力を最大限引き出すことが、おいしさにつながると思っています。

◆大好きなイチゴを年中食べたい気持ちから始まった商品化

 私は本当にイチゴが好きなので、出荷できる12月~6月以外にも食べたかったんです。そして始まったのが「冷凍イチゴ」です。出荷先である上厨川の産直「ぞっこん広場」さんにかき氷機があったので、冷凍イチゴを削ってみてもらったらおいしくて…。練乳をかけて食べるのが好きですね。

 このおいしすぎる「けずりいちご」を多くの人に食べてほしいと思い、商品化を試みることにしました。さらにおいしくするために、冷凍フルーツ専用の削り機を導入するなど、ぞっこん広場さんと日々試作。何度も食べているうちに練乳と冷凍イチゴがおいしく絡むには、時間をおいて冷凍イチゴを少しだけ溶かす必要があることに気が付きました。

 ぞっこん広場さんではもともとソフトクリームの販売をしていたので、さらにおいしく食べるためにソフトクリームをのせてみました。この組み合わせがしっくりきて、ついに「けずりいちごソフト」を商品化。販売できることになりました。イチゴの深い甘さとさわやかな酸味に溶け合う練乳とソフトクリームに思わず笑顔になってしまうはずです。「ぞっこん広場」で、ぜひお召し上がり下さい。

◆愛情込めた栽培をこれからも

 「大好きなイチゴを育てたい」という最初の気持ちを忘れずに、これからも愛情を持って栽培を続けていきます。大好物だからこそ、おいしさに妥協したくないし、してはいけないと思っています。
 そして現状に満足せず、もっとおいしくて安全なイチゴを目指し、工夫と成長を続けていきたいです。「人の和」とICTを融合させ、少しでも多くの方に食べて頂きたい。そのために規模拡大なども検討していきたいと思っています。

 お世話になった方々への恩返しの気持ちから始めた農業。尽きることのないイチゴへの情熱と社会への感謝の気持ちを胸に、地域の皆さまから信頼されるよう試行錯誤を続けていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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