農事組合法人となんは、組合員である農家さんと職員のみなさんで協力しながら、広大な 農地を守り続けている営農団体です。その畑の広さは現在の都南地域だけではなく、旧都南 村といわれていた乙部エリアから、流通センター、本宮の盛岡タカヤアリーナあたりにある 農地までを指します。
今回お話を伺った南野正直さんは「現在、お米を作っている組合員さんは 600 人ほどいます。以前は 800 人ほどいましたが、さまざまな理由で 続けられなくなって引退される方々が増えてきているのが現状です。年間 10~20 人くらい 減っていますね。」と話します。
「組合員さんが大切に守ってきた農地を次世代につなぐために、拡大意向のある組合員さんと連携したり、職員たちが耕作したりしています」。
農業体験は大人向けだけでなく、子ども向けにも開催している農事組合法人となん。幼児 から高校生まで、田植えや稲刈りを体験してもらえる機会も増やしているといいます。 「職業として農業を選択するかどうかは別として、日頃口にしている農作物への関心にちょ っとでもつながってくれたら嬉しいですね」。
さらに、米の利用拡大のため、加工品開発にも取り組んでいます。令和5年には、盛岡のお土産の魅力をデザインの力で発信するプロジェクト「MOYANE(モヤーネ)」の企画に参加し、manordaいわて株式会社(盛岡市)、株式会社千秋堂(雫石町)と共同して、盛岡産米粉(ひとめぼれ)を 使用した「盛岡みのり ブラウニー」を開発。ブラウニーはコーヒー風味でしっとりとした濃厚な味わい。
「盛岡特有の喫茶店文化を取り入れたくて。試作してみてパサつくのがわかったので、どう やってしっとりさせるか半年くらい時間をかけてこの食感に辿り着きました。」と開発秘話を 語る南野さん。
北上川と開運橋、田植えの時期を告げる鷲の雪形が現れた岩手山が印象的なパッケージを開くと都南地域の地図が 描かれており、二重に楽しめる設計に。「盛岡など、街なかに住んでいる方々にも『普段生 活している盛岡の意外に近いところに農村風景が広がっていて、お米やりんごなどを育てて いる人も生活しているんだな』と感じていただけるきっかけなれば、と思います」。
ブラウニーはカワトク、 monakaなど で購入できます。
スーパーに行けば年中並んでいる野菜。今まで恥ずかしながら旬を考えることも少なけ れば、裏側にある背景を想像しようとせず、高騰する物価に悲嘆することもありました。 普段当たり前のように食べているお米や野菜には旬があり、通年収穫できるわけではな いということ。収穫する手間だけでなく、畑を耕して土壌を管理し続けている背景があるということ。
今の食生活が保たれているのは、天候の変化に伴う被害にも屈しない農家さんの忍耐強 さや胆力があってこそなのだと、強く感じられた取材でした。
【取材先】
農事組合法人となん(岩手県盛岡市下飯岡14-189)
https://tonan-agricoop.jp/