大勢でごはんを囲む、当たり前だったそんなことが難しくなっていたここ数年ですが、近頃は少しずつみんなで食事を楽しむ景色が戻ってきています。今回のごはんの会では、わいわいと集まって食べるのにぴったりのメニュー「菊芋パウダー入りのひっつみ」と「かわりおむすび2種」を料理家の橋本玲奈さんから教えていただきました。盛岡産の食材をたっぷり使い楽しく作って、美味しく食べる、にぎやかなごはんの会でした!
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◎菊芋パウダー入りひっつみ(10杯分程度)
《材料》
*ひっつみ生地
中力粉(今回はもち姫使用)200g
菊芋パウダー(農事組合法人となん「菊芋粉末」を使用)20g
ぬるま湯 160cc〜
*汁部分
日本酒 50cc
寒干し大根 2本
・冷凍タイプのものは解凍しておく
・乾燥タイプのものは前日に湯水に浸しておく→戻し汁は出汁として使う
鶏肉(もも)250g
人参 中サイズ1/2本分を太めの千切り
ごぼう 20cmくらいをささがきにして1分程水に晒しておく
油揚げ 小1枚
きのこ各種(椎茸は傘をスライスし軸は細く割く、ぶなしめじ、まいたけなどはほぐしておく)合わせて200gくらい
長ねぎ 1本を斜め薄切り
白だし(300ccの水に大さじ1使用目安)
塩 味が足りない場合に適量
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◎かわりおむすび2種
①蕪の干し葉ときつねのふりかけ
《材料》
蕪の干し葉(冷凍) 1つ(90g)(前日に解凍しておく)
お揚げ 小1枚
みりん 大さじ1
醤油 大さじ1.5
白胡麻 適量
②あまみそたまご
《材料》
たまご 2個
味噌(盛岡杉生園「もりおか城下町みそ」を使用) 大さじ1
きび砂糖 大さじ½
会場は盛岡市上田にある「盛岡ガスクッキングスタジオflamme(フランメ)」。国道4号線沿いにあり、中には最新のビルトインコンロが設置されています。今回はこちらに、11名の参加者の方が集まりました。
講師は料理家の橋本玲奈さんです。神戸出身の玲奈さん、ひっつみは盛岡に来てから知った料理なのだそう。
材料はこちら。ひっつみには、冬期間の盛岡市内産直で良く見かける「寒干し大根」が入ります。今年は暖かかったので生産量が少なく、貴重な食材でした。
今日のゲスト盛岡杉生園(さんせいえん)の鈴木さんと農事組合法人となんの南野さんからは、「もりおか城下町みそ」、「菊芋粉末」、「銀河のしずく」のお話をたっぷり伺います。
◎盛岡杉生園(以下施設HPより引用)
「通常の雇用が困難とされる障がいのある方に対して、生産活動などの機会の提供、知識および能力の向上のために必要な訓練などを行うサービスを提供する、就労継続支援B型事業所です。」
◎農事組合法人となん(以下法人HPより抜粋引用)
「旧都南村の地域で活動している営農組織です。高齢化、後継者不足などさまざまな理由から管理できなくなった土地を、別の農家さんに対して利用の提案をしたり組合として野菜を作ることで、「農地の活用」「都南地域の活性化」を目指しています。」
《菊芋パウダー入りひっつみ》
①ひっつみ生地を作る。中力粉と菊芋パウダーを合わせ、ぬるま湯を少しずつ入れながら混ぜ、練って滑らかなひとまとまりになったらラップなどで乾燥を防ぎ1時間ほど寝かせておく。
玲奈さん「タッパーに入れておけば2~3日は食べられます。揚げたり、洋風のスープの具にしたり、いろいろな組み合わせにチャレンジしてみてくださいね。」
②寒干し大根の戻し汁を使って足りない分は水で補い、汁の分量を計って火にかける。(冷凍タイプのものは水を分量どおり入れる)
沸騰したら日本酒を入れ、鶏肉を一口大に切ったものを入れてアクをすくい中弱火にする。
杉生園の鈴木さんも、テーブルを回り、参加者のみなさんとお話しながら調理の様子を見学していました。
鈴木さん「味噌味のおむすびっていうと表面に塗って焼くことが多いので、混ぜ込んで食べるのは初めてです。しかも卵と!どんな味なんでしょう、楽しみですね」
おむすびに使う城下町みそは「秘伝豆」と「ナンブシロメ」の二種類からテーブルごとに好きな味を選べます。「秘伝豆はまろやかで深みがあり、ナンブシロメはすっきりとした塩気が特徴。どちらも美味しいですが、好みで使い分けてほしいですね。」と鈴木さん。
「菊芋にはイヌリン(水溶性食物繊維)が多く含まれています。イヌリンは糖質の吸収を抑える働きがあると言われており、注目されている食材。栽培は私たち農事組合法人となんで行い、粉に加工するのは盛岡杉生園さんと同じ社会福祉法人が運営する『盛岡アビリティセンター』にお願いしています。」と南野さん。
ガラスの蓋はご飯が炊ける様子がみえておもしろい。今日はお米もガスで炊きますよ!
③ごぼう、人参、しいたけ、他のきのこ類、適当な大きさに切った寒干し大根を入れる。10分程煮て具材に火が通ったら油揚げを入れ、弱火にし、味をみてから「白だし」と塩で調える。①のひっつみ生地を水をつけた手で薄く引っ張り伸ばしながら鍋に入れていく。
玲奈さんの作業台を囲み、ひっつみの作り方をみせてもらいながら作業を進めていきます。「菊芋が入っていると、小麦粉だけの生地よりも少し色が濃くなります、香りもいいですよ。生地をしっかり寝かすことが、もっちり美味しいひっつみの大切なポイント」と玲奈さん。
④ひっつみに火が通ってつるりとした状態になったらカットしたねぎを加え、一煮立ちしたら出来上がり。
《かわりおむすび① 蕪の干し葉きつねのふりかけ》
①鍋に油を熱し、蕪の干し葉をほぐし入れて炒める。全体に油が回ったくらいのところで細かく切ったお揚げを入れ、炒め合わせる。みりんを回し入れ水気がなくなるまで炒める。
②全体に火が通って馴染んだら鍋肌に沿って醤油を回し入れ、一呼吸おいてから混ぜ合わせる。火を止めて白ごまをひねって入れる。
玲奈さん「醤油を入れてからの一呼吸で、香ばしさがぐっと増します!干し菜は今回は蕪でしたが大根や他の葉っぱでも同じように作れます、試してみてくださいね」
《かわりおむすび② あまみそたまご》
①深めの小鍋にたまごを割り入れ、味噌と砂糖を入れよく混ぜておく。
②菜箸を4本持ち、①の鍋を中弱火にかけて根気よく混ぜ続けてポロポロに細かくなったら出来上がり。
「根気よく」が大事なポイントですね!混ぜている間、なんとも言えないいい香りが部屋いっぱいに漂います。これだけでもご飯が進みそうです(笑)テーブル全員で味見をして、好みの味に微調整。
完成!
テーブルごとに材料の切り方、味付けもちょっとずつ違う。他のひっつみを食べると発見もありますね。おかわりで別のテーブルのひっつみもいただきまーす!
まめぶ汁を作るときに、もち姫を使ったという参加者の方も。
ごはんのあとはこちらの3名でトーク。
鈴木さん「もりおか城下町みそは盛岡市の地産地消にもこだわっていますし、米麹の配合も何度も試行錯誤しながら作った商品です。リピーターも多くて、『他の味噌を食べられなくなっちゃった』なんて嬉しい声もいただくんですよ。
仕込みが終わるまで4日間の工程があります。お米に麹菌をつけ、発酵させて米麹を作るところに約3日間。そして大豆を蒸してそれを混ぜて味噌の原型が出来上がるのが1日。そこから約1年発酵熟成させて味噌ができあがります。
職員が指導しながら、福祉作業所の利用者さんと一緒に作っています。菌なのでエアコンを使うと菌が舞ってしまう。暖房や冷房を使わない部屋での作業なので大変ではあるのですが、みなさんに喜んでいただけるとやりがいがありますね。そして、味噌が売れることで利用者さんのお給料の一部にもなっていきます。」
南野さん「ひっつみに使った『もち姫』はもち性の小麦で、岩手県で生まれた品種です。みなさんが普段食べている小麦はうるち性の小麦なので性質がそもそも違うんですよ。この食感と喉越しは癖になりますよね。おむすびのお米は『銀河のしずく』。これは冷めてからも美味しいのが特徴なのでお弁当やおむすび、お寿司にぴったり。
菊芋パウダーは商品としては30gですが、水分が多いのでだいたい300gの菊芋を粉末にしています。コーヒーのような味の強いものに混ぜてもいいですし、味噌汁に入れると根菜のコクが手軽にプラスできます。野菜のだしがちょっとほしいなというときに使っていただきたいですね。」
鈴木さん「菊芋パウダーは杉生園の隣にある盛岡アビリティセンターで粉末に加工しています。果物や魚などいろいろなものを、電気の石臼のような機械で粉にしています。」
参加者の方の中にも菊芋が気になっていた方がたくさんいたようで、他の調理方法を訪ねる声も。
玲奈さん「私は芽をとって、薄くスライスした菊芋をひたひたの水から茹で、ブレンダーでなめらかにして作るポタージュをよく作りますよ、ごぼうに近い香りとりんごのようなみずみずしい食感はそのままスライスでサラダにしてもよくあいます。
鈴木さん、南野さんのお話を聞いているとこうやって生産物がつながり、加工されて、私たちの手元に届いてるんだなと実感しますね。盛岡は美味しい農作物がたくさんあるので、こういう流れがもっと深まっていったらいいなと思います。」
おみやげもいただきました!家でもひっつみとおむすび、作ってみなくちゃ!
調理中のテーブルも、みなさんで楽しそうに手を動かしていました。「楽しく食べる」だけではなくて「楽しく作る」ことができるのも、ひっつみやおむすびのいいところですね。
もりおか城下町みそ、菊芋パウダー、銀河のしずく、寒干し大根…季節の野菜もずらりと並ぶと、あらためて盛岡の食の豊かさを感じました。いつも行くスーパーや産直でも、初めての食材と出会えるかも!
ぜひ、仲間と、家族と、わいわい作りながら美味しいごはんの時間を楽しんでくださいね。
写真・文 LITERS 菅原茉莉
ご参加者の声
・普段、菊芋は食べないので、こんな食べ方ができるのか!!と目からウロコでした
・ひっつむときの感触が思い通りにできなかったけれど、そこが面白い
・味噌と玉子のおむすびがかんたんで作れそう
・もち姫を使ったひっつみはもちもちつるんと、とても食べやすくおいしかった
・生産者のお話を聞くことができ、盛岡にもたくさんの食材があることが知られて楽しい時間を過ごした
・今後も盛岡市産食材を使ったイベントを開催して欲しい、生産者や事業者の話を聞く機会は貴重なのでぜひ続けてほしい
・県産品でも料理方法がわからず、使っていない食材があるので、もっともっと発信して欲しい