盛岡産の酒米「吟ぎんが」を醸す、「AKABU 純米吟醸」
全国的に人気の日本酒ブランド「AKABU」を手掛ける「赤武酒造株式会社」。2022年度「全国新酒鑑評会」金賞、国が後援する「SAKE COMPETITION 2018」純米吟醸部門GOLD賞、2017年度「岩手県新酒鑑評会」県知事賞などの華々しい受賞歴から、品質の高さがうかがえます。
さらに近年は若者に向けた商品を発表。2023年はイラストレーターの森優 さん、2024年は作家で歌人のくどうれいんさんといった岩手県出身のクリエーターが、県内にある酒造会社7社それぞれの代表銘柄のラベルを手掛けた企画「ganshu」に参加、ダンスグループのメンバーとのコラボなどが話題になっています。
こうした活躍の裏には、5代目・古舘秀峰(ふるだてひでみね)さんの歴史ある酒蔵を守りたいという先人への敬意と、次世代に繋いでいきたいという未来への希望があります。
1896年に岩手県大槌町で創業した赤武酒造。東日本大震災に遭い、5代目・古舘秀峰(ふるだてひでみね)さんの決断で2011年6月に盛岡市に移りました。
2013年夏、「赤武酒造の新しい歴史を創る!」の合い言葉で募った社員達と仮設工場の近くに「復活蔵」を再建。
翌年、東京農業大学醸造科学科を卒業した長男の龍之介さんが帰郷。他の酒蔵で短期間ながら修行し、独立行政法人酒類総合研究所でも3カ月間の醸造研修を受けます。研修の際に造った日本酒が「意外と美味しかった」と秀峰さん。「顧客の志向が従来のコクのあるものから、すっきりして飲みやすいものに変化している」と首都圏の販売店からアドバイスを受け、新銘柄を構想していた時期でもありました。
新しい銘柄を造るなら、新しい感覚を持った人間に任せよう。
龍之介さんを杜氏に抜擢し、志しを持つ社員たちと共社名を冠する日本酒「AKABU」を造り上げました。
「22歳の杜氏」というだけで画期的でしたが、そのころは斬新だったローマ字の商品名から赤い兜の力強いラベルデザインまで、すべてが挑戦でした。
新しい試みに取り組む一方で、秀峰さんは蔵のある本宮地区に赤武酒造の存在を認めてもらいたいと思っていました。創業から移転まで100年以上の年月、大槌に根を下ろしていたからこそ、古い考えと思われがちな「地域との関係性」の大切さを知っていたからです。
そんなとき、地域の世話人である藤村勉さんに声を掛けてもらい、消防団や盛岡秋まつりなどを通した地区との関わり方を教えてもらいます。付き合ううちに気心が知れ、藤村さんが代表理事を務める農事組合法人FSクルーに酒米「吟ぎんが」の栽培を依頼するように。
岩手県オリジナルの酒造好適米「吟ぎんが」は、寒さに強い、粒が大きい、麹菌の住み家となる「心白(しんぱく)」が発現しやすい、などが特徴です。秀峰さんは「蒸すと周りが硬く、中が柔らかくなるので扱いやすい。酒になったときの仕上がりもきれいです」と高く評価。藤村さんは「酒用は多いもので50%ほど削りますから、中心が柔らかいと粒が割れてしまって使えません。気候に合わせて、肥料や水を調整して理想の酒米を目指しています」と栽培の難しさを語ります。しかし手間が掛かるだけに「育てた米で造った酒は『うまい』の一言に尽きます。今では『赤武』が褒められると自分のことのようにうれしいです」。
赤武酒造では盛岡産「吟ぎんが」の他にも、やはり県で開発した酒米「結の香」や酵母「ジョバンニの調べ」などを使用。「育った地域の風土が酒米の味、そして酒の味に反映されると私は感じています。赤武酒造の酒には岩手の風土が詰まっています」。改良を加えながらもコクを大切にした「浜娘」は、岩手の酒を岩手の風土で味わってほしいという思いから「岩手県限定」としています。
今まで日本酒をあまり飲んでこなかった若い世代には、ぜひ盛岡産の「吟ぎんが」を使用した「AKABU 純米吟醸」を試してもらいたいと秀峰さん。リンゴのような華やかな果実香と爽やかな甘味をともなった淡い酸味が特徴です。
「肩ひじ張らずに、まずは飲んでみてください。食事にも合うように設計しています。特にシーフードのマリネのような爽やかな味の料理をより一層引き立ててくれます」
盛岡に移って13年、社員達も成長し新しいステージへ挑戦することで、適格な目標も見えています。岩手を代表する酒蔵から、日本を代表する酒蔵へと目標を据え、常に高みへと挑戦する赤武酒造。その目覚ましい活躍から目が離せません。
【店舗情報】
全国の赤武酒造特約店にて購入可能。
販売店一覧 https://www.akabu1.com/store/
をご確認ください。
赤武酒造株式会社
岩手県盛岡市北飯岡1丁目8番60号
※直売は行っておりません。