お米、果物、野菜、美味しい食材がずらりと揃う、盛岡の秋。紅葉の見事な盛岡市中央公民館で11名の参加者のみなさんと一緒にスタートした、秋のごはんの会。前回の醤油麹作りも参加したというリピートの方のほか、初めての参加の方も多く会場内は和やかな雰囲気です。
すぐに試したくなるような美味しいレシピを教えてくれるのは、講師の橋本玲奈さんです。
「味の甘さや酸味、りんごの食感…。それぞれの好みがあると思います。今日は、みなさんが思い描く理想のりんごジャムを作っていきましょう」という玲奈さんのお話のあいだも、ずっと気になっていたのは調理室中に漂う香ばしい匂い。まるでパン屋さんの中にいるようです。この香りの正体は…?
「実はみなさんに作ってもらう前に、玲奈さんのジャムを味わってもらえるようジャムトーストをご用意しています!」スタッフの方の声に、わぁっと嬉しそうな声が広がる調理室。
「今日の食パンは、本宮にあるパン屋さんpanopanoの「しっとり食パン」です。食パンには包丁で5ミリほど、切れ目をいれています。こうすると溶けたバターがパンにじわっとしみこむのが美味しいんですよ。」と玲奈さん。
焼き上がったトーストに玲奈さん作のジャムをたっぷりとのせて…まずは試食の時間です。ごろごろに切ったのは果肉感がはっきりわかりますし、すりおろしはとろりとなめらかで食べやすく、切り方の違いがジャム全体の食感に表れてくるのがわかります。
りんご全体の重さを量り、その重さに対して30%の砂糖を入れます。玲奈さんが使っているのは、ビートグラニュー糖。半分を洋梨など他の果物に代えたり、品種の違うりんごを組み合わせてもいいのだそう。ここにレモン汁を加えて火を通していきます。
「1個のりんごから気軽に作って欲しいですね、1個のりんごならこのくらい小さな鍋でも作れますよ。国産が出回っている時期は是非国産レモンで作ってみてくださいね。」という玲奈さんの手元には15㎝ほどの小さな片手鍋。レモン汁を最後に入れると酸味が際立ち、さっぱりとした仕上がりになるそうです。「鍋にかけてからの火加減は『強気の強火』で!ジャムはコトコト煮込むイメージがあるかもしれませんが、ここは焦げないようによくみて一気に火を入れていきましょう。」と話しながら鍋を混ぜる玲奈さんの手元では、糖度が上がりジャムがキラッとしてきました。混ぜた時に鍋底がチラッと見えるくらいのとろみがついたら、りんごジャムのできあがりです。
こちらは、今日調理している盛岡りんごの生産者さんとJAいわて中央の職員さん。さきほど試食させてもらった玲奈さんのジャムトーストに「これはおいしい!酸味と甘味がちょうどいいですね!」とにっこり。
「りんごはハーブとも相性がいいんですよ!」という玲奈さんの声で、こちらのテーブルでは次のお肉料理で使う予定だったローズマリーを入れてみることにしたようですよ。
ほんの少し入れただけに見えますが一気に大人な雰囲気が漂うジャム鍋のなか。「ほかにもシナモンやラム酒、ブランデーなどもあいますよ。アルコール度が高いお酒を使うときは最後に入れてさっと火を通すくらいで試してみてくださいね。」と、玲奈さん。
好みのとろみ具合まで煮詰め、消毒した蓋付きのビンに詰めていきます。冷蔵庫で2週間ほどは美味しく食べられるのだそう。
手の付け根でビンをトントントンとして空気を抜くのを実演してくれる玲奈さん。「ビン詰めのコツは空気をしっかり抜くこと。蒸し器などで熱して空気を抜く「脱気」するともっと日持ちするようになりますよ。長期保存のときはやってみてください。」
色、切り方、風味。テーブルごとに個性豊かなジャムが出来上がりました!
次の料理は「もりおかあじわい林檎ポークの林檎づくしソテー」。こちらも調理の前に玲奈さんの実演をみせていただきました。肩ロース薄切り肉で一口大のりんごを巻いていきます。りんごはシナノゴールド。
巻き終わりを下にしてしばらく動かさずに焼けば肉ははがれにくくなりますが、外れてしまうのが気になるときは、つま楊枝を刺すと安心だそうです。さっきまでりんごの甘い香りでいっぱいだった調理室は、食欲そそるお肉の香りでいっぱいに…。
焼き色がついたら、白ワインをお肉の半分くらいまでいれていきます。(今回は50mm入れました)。ローズマリーものせたら、蓋をして煮込んでいきます。巻いているのはりんごなので豚肉に火が通れば大丈夫。
ドレッシングは使わず、オリーブオイルとビネガー、塩で味付けをしていきます。
火が通ったらフライパンを傾け、出た肉汁にりんごジャムと粒マスタードをいれます。ここで一度味をみます。塩加減はこのときに調整。「そのとき使うお肉やりんごの状態によってもちょうどいい塩加減は変わるので「おいしい!」と思える量の塩をいれてくださいね。」とテーブルを回りながら玲奈さんが参加者の方にお話していました。
玲奈さんのレシピを自宅で作ると「我が家の味ってなんだろう」とよく考えます。一緒に食卓を囲む家族が喜ぶ味付けを試行錯誤して探していくのも、台所に立つ醍醐味なのかもしれませんね。
生産者側のみなさんも初めてみる調理方法に興味津々の様子。「りんごの品種を変えると雰囲気が変わりそうだね、サンふじも合いそうだなあ。」と料理を囲んでお話していました。
テーブルごとの調理も、二品目ということで息ぴったりの様子。誰かと一緒に料理をすると、素材の切り方や盛り付け方もいろいろな形をみられて嬉しいですね。
塩で味を整えた後は汁気がなくなるまで煮詰めてできあがりです。「メインは高さをだして盛り付けるときれいにみえますよ。」と玲奈さんのアドバイスを聞きながら、美味しそうなお皿が各テーブルに並んでいきます。
それぞれのテーブルで試食。「家だと豚肉は生姜焼きにすることが多いですが、この料理だとカロリーも抑えられるし嬉しい。」「りんごと豚肉の組み合わせは子どもも喜びそう、ごちそう感もあっていいですね。」という声がテーブル聞こえてきました。
ボリュームたっぷりに見えますが、りんごなので食感はお肉より軽めです。マスタードの風味がピッタリです。ごちそうさまでした!
引き続き調理室では生産者側のお二人を交えてのトークに入っていきます。今回お話ししてくださったのは、盛岡市太田のりんご農家、中島さんと、JA岩手中央の横澤さん、そして講師の橋本玲奈さんの三名です。
「秋までに摘果作業や剪定作業をしてきて、今がふじの最盛期ですね。お客さんに買ってもらって、笑顔で食べてもらうことがなにより楽しみなんです。今日は私たち生産者では思いつかないような調理法でりんごを味わってもらうことができて嬉しい時間でした。」と中島さん。
横澤さんは、りんごなどの生産物を市場に販売したり、栽培に関する新しい情報を生産者のみなさんに伝えるなど生産の指導をしているのだそうです。 「梨やキウイを早く熟させたいときは、りんごと一緒に袋に入れておくといいんですよ!」と横澤さん。
今まで知りませんでした!果物同士でそんな効果があるなんて驚きです。
「神戸から盛岡に移住してきて驚いたのはりんごの種類の多さですね。向こうでは身近なのは2種類くらいでしたから。あと、新鮮なりんごの美味しさは盛岡で知ったと思っています。パリッとした独特の食感に夢中になりましたよ!」と、玲奈さん。
畑の話、流通の話、料理の話。りんごが私たちの手元に届くまでを感じられる三人のトークの時間でした。
トークを終えた調理室の隣の部屋には、フレッシュなりんごがいっぱいに並んでいました。りんご畑にいるようないい香りです!
参加者のみなさんのおみやげには「おいしい盛岡 定期お届け便(りんご)」のお試しセットをご用意! 紅玉、シナノゴールド、ふじ、王林の4種類。
「盛岡のりんごの特長は、木の上でちゃんと熟してから収穫をしている、ということです。当たり前に聞こえるかもしれませんが(笑)熟す前に収穫してしまったりんごとは、味の深さ、甘さが確実に違いますよ。」
今日作った二品のレシピもいただきました!毎回、玲奈さんの手書きの文字に癒されます…。家で復習しながら作ってみよう。
会場には、昭和三十年代、盛岡市が生んだ女流画家、深沢紅子の作品も展示されていました。「絵に描かれている、りんごの品種はなんでしょう?」というスタッフの問いかけに参加者の方から「インドりんご!なつかしいー!」と声があがる場面も。
りんごを美味しく長持ちさせるにはどうしたらいいですか?という質問にはJAいわて中央の横澤さんが「りんごは呼吸して、ガスをだしている。長持ちさせるには、ラップで包んで冷暗所に置くのが一番ですね。」とお話しされていました。
他にも「料理ごとに合う品種を教えて!」など、質問がたくさん寄せられていました。自分の中で当たり前だと思っていたことでも、プロの方から直接お話を聞くといろいろな発見がありますね。もっと早くに知っていたかった!というお話しもたくさんあり、勉強になりました。
盛岡の秋冬の味覚、りんご。おうちの食事やおやつでも、長くおいしくたのしむ工夫をしていきたいですね。
【オフショット】
メインに添えるサラダにも、目から鱗のワンポイントアドバイス。
「水にさらして、水気をしっかりと切る。キッチンペーパーと一緒にジップロックに入れ、冷蔵庫で冷やしておくとパリパリとした食感のサラダができますよ。」パリッとさせるのは自宅では難しそう…と思っていましたがこれならできそうです!
ぜひお試しくださいね!
2021年7月開催 おいしい夏の盛岡ごはんの会レポート『夏野菜と醬油麹 長く美味しく食卓で』はこちらから